PC電源ユニットの選び方

PC電源ユニット選びの流れは、以下の通りです:

  1. 電源のワット数(出力の大きさ)を決める。
  2. 「80PLUS認証」をチェックする
  3. 出力コネクタの形状と数をチェックする
  4. 電源ケーブルの着脱や形状をチェックする
  5. +12V系統(12Vライン)をチェックする
  6. 静音性をチェックする

以下、順を追って説明します。

電源ユニットとは?

パソコンの電源ユニットとは、パソコンの各パーツに電力を供給するためのPCパーツです。電気には「交流」と「直流」の2種類があります。家庭用コンセントからの交流電源(AC。電圧100V)を直流電源(DC。3.3/5/12Vなど)に変換し電圧の降下調整を行ない、CPU・マザーボード・ビデオカード・HDDなどの各パーツに電力を供給する。これが電源ユニットの役割です。

電源ユニットはパソコンにとって重要なパーツといえます。例えば、搭載したパーツに十分に供給できる電源=ワット数がなければ、パソコンを起動できません。また、各PCパーツへの電力供給が不安定であれば、パソコンが正常に動作しなくなったり、使用中に突然、電源が落ちるなどのトラブルを引き起こす可能性があります。

基本的には、電源ユニットは単体で購入

基本的には、電源ユニットは単体で購入するものと考えておきましょう。例外として、スリムPCケースあるいはベアボーンキットなどでは(通常よりも小さめの)電源が付属している場合があります。

電源ユニットの規格

電源ユニットにはいくつか規格があります。基本的には「PCケース」と共通しています。電源ユニットとPCケースの規格が異なると、取り付けできません。

もっとも、自作パソコン(デスクトップパソコン)では「ATX(ATX 12V)電源」を選ぶのが一般的です。

以下、電源ユニットの規格の例です。

  • ATX(ATX 12V)……デスクトップ用PC電源として最も一般的な規格
  • EPS12V……サーバーやワークステーションなど、大容量の電源が必要なPC向け
  • SFX……スリムPCケース向け。100W~400Wと、ATX電源より低出力
  • FlexATX……省スペース型PCケース向け

本体の奥行き=ショートサイズの電源ユニットも

製品によっては「奥行きが短い電源ユニット」もあります。「コンパクト設計」と呼ぶメーカーもあります。

奥行きが短い場合、「PCケースに組み込みやすい」「他のパーツを装着するときの邪魔にならない」「電源ケーブルがまとめやすい」などのメリットがあります。小さめのPCケースにおすすめといえます。

電源ユニットのメーカー・ブランド

Antec(アンテック)、CoolerMaster(クーラーマスター)、玄人志向(くろうとしこう)、Corsair(コルセア)、Seasonic(シーソニック)、ENERMAX(エナーマックス)、SilverStone(シルバーストーン)、FSPなどが、価格コムの人気ランキング上位の電源ユニットのメーカー・ブランドです。

その他、KEIAN、XFX、Scythe(サイズ)、オウルテック、Thermaltake、AOpen、APC、Fractal Design、IBM、LEPA、SUPER FLOWER、UACなどの電源メーカーがあります。

1)電源のワット数(出力の大きさ)を決める。

電源ユニットの選び方で最も悩むのは、「どのくらいの容量(ワット数。出力の大きさ)の製品を選べばよいか?=使用するパーツがきちんと動作する出力か?」だと思います。

結論を先にいうと「400~500ワットクラスの電源」あたりから選ぶのがおすすめ、といえます。

現在では、CPUやHDD・SSDなど最新のパーツは「省電力化」が進んでいます。このため通常のパーツ構成なら、それほど大きなワット数は必要ありません。

ただし「ビデオカード」を使う場合は別。とくに、消費電力の大きい高性能ビデオカードを利用する場合は、容量に余裕のある電源ユニットを利用することになります。

逆にいうと、「最も消費電力の大きい『グラフィックカード』を基準に選ぶのが、電源選びのコツ」ということになります。

以上のことから、電源のワット数選びの一般的な目安は以下の通りです。

電源ユニットのワット数選びの目安
  • グラフィックカードを使わないPC……300ワットクラスの電源
  • ミドルレンジのグラフィックカードを搭載したPC……400~500ワットクラスの電源
  • ハイエンドのグラフィックカードを搭載するPC……550~700ワットクラスの電源

とはいえ、300ワットクラスの電源は製品数があまり多くありません。また、コネクタの種類や数などのスペックも高いとはいえません。

このため現実問題として「400~500ワットクラスの電源」あたりから選ぶのがおすすめ、ということになります。実際、このあたりの電源は製品数も多く、またスペックなども高くなっています。また、将来の「パーツの増設」にも対応できると思います。

もちろん、ハイエンドのビデオカードを搭載する場合は、より出力の大きい電源を選ぶ方がよいでしょう。

※ちなみに、多くの電源は「負荷が50%前後で最も効率よく動作する」ようになっています。例えば定格出力500Wの電源なら、「全体の消費電力が250W程度のパソコンで使うのが最も効率的」といえます。

「定格出力」と「最大出力」

ちなみに電源の出力には「定格出力」と「最大出力」の2つがあります。定格出力とは「安定して出力を保てるワット数」のこと。一方、最大出力(ピーク時出力とも)とは「限界のワット数=瞬間的に出せるワット数」のことを表しています。

電源の出力=ワット数を確認する場合は、基本的には「定格出力」のワット数を確認します。

電源の計算について(電源計算機)

ネット上では、PCシステムに必要な電源容量を計算できる「電源計算機」を公開しているページもあります。これは、ユーザーが使用している各パーツやデバイス(装置)をあらかじめ用意されたリストの中から選ぶだけで、必要な電源ユニットの容量を自動計算してくれるWebサービス。「電源電卓」「電源用ワット数計算機」などとも呼ばれています。

以下に電源計算機の例を挙げておきます:

2)「80PLUS認証」をチェックする

「80PLUS認証」とは、電源ユニットの「電力変換効率」を示す規格のこと。交流入力から直流出力へ変換する際、電力変換効率が80%以上である製品に「80PLUS」のロゴが与えられる、というものです。

80PLUS認証のグレードには6つあります。電源変換効率の高い順からPlatinum(プラチナ)、Gold(ゴールド)、Silver(シルバー)、Bronze(ブロンズ)、Standard(スタンダード)、TITANIUM(チタン)というグレードになっています。

グレードの高い製品ほど電力を無駄にしないため、消費電力が低く発熱も小さくなるなど省電力=電気代が節約できるといえます。また「電源の寿命が延びる」「静音化につながる」などのメリットもあります。

ただしグレードが上がるほど、電源ユニットの価格も高くなります。消費電力の低さを求めるなら、ゴールド以上の製品を選ぶのがよいといわれています。

もっとも、「80PLUS認証」のグレードはあくまで「ひとつの目安」。価格やケーブルの種類などで各製品を比較検討し、「総合的に判断する」ことをおすすめします。

※「80PLUS認証」の詳細は、『80 PLUS®。PSU 認証プログラム | CLEAResult』を参照のこと。

3)出力コネクタの形状と数をチェックする

自作パソコンの電源ユニットで必須なのは、以下の5つの出力コネクタです。

  • ATXメインコネクタ(20ピンまたは24ピン)……マザーボードへのメイン電源
  • プロセッサパワーコネクタ(4ピンまたは8ピン)……CPU用の電源
  • PCI Express補助電源コネクタ(6ピンまたは8ピン)……ビデオカード用
  • Serial ATA(SATA)コネクタ(15ピン)……HDD・SSD・光学ドライブ用
  • ペリフェラルコネクタ(4ピン)……冷却ファンおよび古いHDD・SSD・光学ドライブ用

ATXメインコネクタは多くの場合、20ピン+4ピンに分割が可能な24ピンコネクタが採用されています。プロセッサパワーコネクタ(ATX12V / EPS12Vコネクタ)も4ピン+4ピンに分割が可能な8ピンコネクタが採用されています。この2つのコネクタは通常、どの製品でも数に違いはありません。

一方、PCI Express補助電源コネクタおよびSATAコネクタは、製品によって数が異なっています。このため、ビデオカードを搭載する予定ならビデオカードが必要とするPCI Express補助電源コネクタの形状と数を、またHDDやSSDを複数搭載する予定ならSATAコネクタの数を、電源ユニットのスペック表であらかじめ確認しておきましょう。

なお、電源ケーブルの長さも要チェック。PCケースの大きさと大きなズレがないかどうか、電源ユニットのスペック表であらかじめケーブルの長さを確認しておきましょう。製品によっては、延長ケーブルや変換ケーブルが付属しているものもあります。

4)電源ケーブルの着脱や形状をチェックする

電源ケーブルが「プラグインタイプ(ケーブル着脱式)」か?

電源ユニットには、一部あるいは全部のケーブルを着脱できる製品があります。使わないケーブルを外しておけるため配線をすっきりとできるほか、ケース内の空気の流れを妨げないので熱がこもりにくくなるなどのメリットがあります。組み込むPCパーツの数が少ない場合、効果的といえます。

※ただし、着脱コネクタそのものはメーカー間の互換性がなく、その電源ユニット専用となるので、ご注意を。

フラットタイプのケーブルか?

「フラットケーブル」を採用しているかどうかも、配線のしやすさの目安となります。フラットケーブルには、曲げやすく配線しやすいという特徴があります。PCケースの裏面を配線する場合に効果的といえます。

5)+12V系統(12Vライン)をチェックする

ハイエンドなパーツ(ビデオカードなど)を使う場合は「+12Vが1系統(シングルレーンまたはシングルライン)で出力の大きい製品」を選ぶのが、最近の主流となっています。というのも、+12Vの最大出力が大きければ、例えば複数のビデオカードを装着しても出力不足になりにくく安定した動作が見込めるからです。

電源ユニットのスペックには「出力表」が掲載されているのが一般的です。出力表では、例えば「+12V」という表記を「+12V系統(またはライン)」と呼びます。

それぞれの系統が電流を送るパーツは、以下の通りです。

  • +3.3V……「メモリ」や「PCIスロット」など
  • +5V……「マザーボード」「PCIスロット」など
  • +12V……「CPU」「ビデオカード」「HDD」「光学ドライブ」など
  • -12V……ほとんど使用されていない
  • +5Vsb……スリープ用・省電力モード用

中でも一番重要なのが「+12V系統」。なぜなら、「CPU」「ビデオカード」「HDD」「光学ドライブ」など最も電力を必要とするPCパーツに電流を供給しているからです。

この+12V系統が1個の場合「シングルレーン(またはシングルライン)、2個の場合「デュアルレーン(またはデュアルライン。マルチレーンと呼ぶことも)」といいます。

最近の電源ユニットでは「シングルレーン」を採用する製品が増えています。シングルレーンは1系統だけなので、電流(A=アンペア)に余裕があります。特に処理の重いゲームなどビデオカードに高負荷がかかる利用環境では、電流に余裕があるシングルレーンの電源ユニットがおすすめといえます。

一方、デュアルレーンは系統を分けることで電力を分割し、1系統に流れる電流を少なくすることで電源の安定性・安全性を高めるという仕組みです。CPUに電力制御機能が搭載され始めたころは、デュアルレーンが主流となりました。というのも、同じく+12Vによって電力供給されているペリフェラル機器(HDDや光学ドライブなど)が、(CPUの電力制御機能で+12Vの出力が大きく変動することにより)起動中に止まってしまう可能性があったためです。

しかし近年、高性能なCPUのオーバークロックやグラフィックボードを複数搭載する(SLIやCrossfire)という利用方法では、どちらか1つの系統の電流が不足しただけで両方の系統が不安定になり、動作不良を起こす可能性も出てきました。このため、最近の電源ユニットでは「シングルレーン」を採用する製品が増えている、というわけです。

6)静音性をチェックする

大容量の電源ユニット(700W以上)の場合、発熱が大きくなります。このため、冷却ファン(排熱ファン)の騒音もそれなりに大きくなりがちです。

静音性を重視した製品の場合、低負荷や低温度の状態ではファンを停止して静音性を高める仕組みを採用したものもあります。また、大型の冷却ファンを搭載することで静音性を高めている製品もあります。

ただし静音性を重視した電源ユニットは、負荷や温度の監視およびファンの回転数制御も必要となるため、一般的な電源ユニットと比較して高価となっています。

電源の冷却ファンの大きさを気にされる方は、静音性を重視した製品かどうか? をチェックすることをおすすめします。

さて、次は「PCパーツの選び方(拡張パーツ編)」です。

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