マザーボードの選び方
マザーボード選びの流れは、以下の通りです:
- 「情報収集」をする
- 「ソケット」(あるいは対応CPU)を決める
- 「大きさ(フォームファクタ)」を決める
- 「メーカー」を決める
- 「チップセット」を決める
- 「価格」と「スペック」で絞り込む
以下、順を追って説明します。
マザーボードが決まれば、残りのPCパーツもほぼ自動的に決まる
マザーボード (Motherboard)とはその名の通り、パソコンの土台となる板(プリント基板、電子回路基板)のこと。メインボード (Mainboard) と呼ぶこともあります(ちなみに、アップルでは「ロジックボード」)。略称として「MB」「M/B」「マザボ」などがあります。
マザーボードは、パソコンの性能を決める非常に重要なパーツです。なぜなら、CPU・メモリ・HDD・SDDなど、あらゆるPCパーツがマザーボードに接続されるからです。
このため、「マザーボードの性能(仕様)により組み込めるパーツが決まる」ことになります。逆にいうと「マザーボードの仕様・規格に合わないパーツは組み込むことができない」ということになります。
つまり、「マザーボードが決まれば、残りのPCパーツもほぼ自動的に決まる」というわけです。
しかし、マザーボードを選ぶのはなかなか大変です。というのも、各メーカーから数多くのマザーボードが販売されているからです。同じメーカーからでさえ、たくさんの製品が似たような型番で販売されています。そのため、どのメーカーのどの型番のマザーボードを買えばよいのか? と、初心者の方は大いに悩むことと思います(事実、私はそうでした)。
そこでおすすめしたいのが、売れ筋ランキング・人気ランキングなどの活用。ランキングを参考にして、候補を絞る(数を絞る)わけです。
最初はわからなくても、ランキング上位の人気製品を仕様・スペックなどをチェックしていくことで、その時々の最新マザーボードの傾向がつかめると思います。
そうしてマザーボードの各種仕様を見比べて、最終的に自分の目的に合ったマザーボードを選べばよい、と思います。
1)マザーボードの「情報収集」をする
マザーボードの情報収集すなわち、最新のマザーボードのラインアップそしてCPUの売れ筋・人気ランキングなどを調べたいときは、「価格コム」や自作パソコンショップのランキングページがおすすめです。
まずは「価格コム」のマザーボードコーナー。各マザーボードの売れ筋ランキング、最安値情報、スペックが掲載されているほか、メーカー仕様表へのリンクなどもあります。そしてなにより、実際に製品を使用したユーザーによるレビューそしてクチコミ情報の投稿が、とても参考になります。
もうひとつは、自作パソコンショップのWEBサイトにある人気ランキングページ。こちらでも、具体的にどのマザーボードが多く購入されているのかを知ることができます。
では、マザーボードの情報収集をする際には、どんな点に注目すればいいのか? このあと説明したいと思います。
2)マザーボードの「ソケット」を決める
マザーボード選びの基準としてまず挙げられるのは「ソケット」。マザーボードにもCPUと同じく「ソケット」と呼ばれる、CPUの取り付け口があります。このソケットの種類により、利用できるCPUが異なります。
例えばインテルのCPUなら「LGA1151」「LGA1150」「LGA2011」「LGA2011 v3」「LGA1155」などのソケットがあります。一方、AMDなら「SocketFM2」「SocketAM3」「SocketAM2」「SocketAM1」などのソケットがあります。
マザーボードもCPU同様、ソケットによって分類されています。そこで、「使おうと思っているCPUのソケットに対応したマザーボードを探して選べばよい」ということになります。マザーボードを選ぶ際は、使用予定のCPUのソケットと同じかどうか、チェックしましょう。
実際、自作パソコンショップのWebサイトでも、CPUメーカーとソケット形状で商品を絞り込めるようになっているところが多いようです。
ちなみにソケットが一致していても、CPUが最新で発売されたばかりの場合、うまく動作しないことがあります。というのもマザーボードの対応が遅れている、つまりBIOS(バイオス。マザーボードの基本ソフトウェア)が対応できていないからです。この場合、BIOSのアップデートにより、使えるようになるのが一般的です。マザーボードメーカーのWebサイトで、BIOSのアップデートが公開されているか? をチェックしましょう。
3)マザーボードの「大きさ(フォームファクタ)」を決める
マザーボードのフォームファクタとは、マザーボードの形状規格(物理寸法の標準規格)のこと。要するに、マザーボードのサイズ(大きさ)で、PCケースの大きさを左右します。また収納ドライブ数・拡張カードなど、PCの拡張性が大きく変わります。基本的にマザーボードのサイズが大きいものほど、高性能で拡張性が高くなります。
主なフォームファクタの種類には、ATX・Micro-ATX・Mini-ITX(ミニ・アイティーエックス)などがあります。一般的には「ATX」がおすすめです。というのも、価格と拡張性のバランスが良いからです。マザーボードのフォームファクタとして「定番」といえます。
「拡張性が低くてもよい(パーツの増設予定がない)」「予算を抑えたい」「ATXより小さいPC(省スペースPC)を自作したい」などという場合は、ATXよりも小さい「Micro-ATX」がおすすめといえます。
4)マザーボードの「メーカー」を決める
マザーボードの「ソケット」と「フォームファクタ」を決めたあとは、マザーボードの「メーカー」を決めておくと、商品探しがしやすいと思います。
個人的には、初心者におすすめのマザーボードメーカーは「ASUS」です。
以下、主なマザーボードメーカーを紹介しておきます。
- ASUS【おすすめ】
- シェア1位。BIOSやマニュアルが日本語に対応。初心者でも安心でオススメ。
- GIGABYTE
- 配線が色分けされているのが特徴的。動作の安定性とコストパフォーマンスに定評がある。
- MSI
- 特別な機能をあまり搭載していない、クセの少ないマザーボードを作る老舗メーカー。
- AsRock
- 新しい機能に素早く対応した、前衛的なマザーボードを作る、マニアに人気のメーカー
5)マザーボードの「チップセット」を決める
チップセットとは?
チップセットとは、CPUと各パーツとの間で「データの橋渡し」をする役目を持つ部品。チップセットによって、搭載できるパーツや機能が決まります。
例えば、CPUソケット・最大メモリ容量・PCIExpressの規格・USBポートの数・SATAポートの数・オーバークロックの可否など、このチップセットによって決まります。マザーボードに組み込めるCPUも、チップセットにより決まっている、というわけです。
このためチップセットは「PC全体のグレードを決める重要な部品」ともいえます。
チップセットはあらかじめマザーボードの基板上に組み込まれています。よって、(CPUとは異なり)チップセット単体では購入できません。
チップセットのメーカーと種類
自作パソコン向けチップセットのメーカーとしては、インテルとAMDがあり、それぞれのCPUに対応しています。具体的には、インテルのチップセットの場合、インテル100シリーズ(Z170, H170, B150, Q170, Q150)、インテル9シリーズ(Z97, H97, X99)などがあります(2015/11/現在)。基本的には数字が大きくなるほど、そのチップセットシリーズの新しい型番となります。
チップセットにはいくつか種類があります。搭載するチップセットにより、マザーボードのグレード・ランクが分かります。最上位のチップセットを搭載したマザーボードなら、オーバークロックなど最も機能が豊富。一方、下位チップセットを搭載したマザーボードは、SATA3・USB3.0ポートが少ないなど、機能が抑えられています。
ただしチップセットが同じ場合でも、製品によってサイズや細かい仕様、メーカー独自の機能などに違いがあります。
Z系とH系、どちらを選ぶべきか?
インテルのチップセットの場合、現在はZ系(Z170, Z97, Z87など)とH系(H170, H97, H87など)の2つが主流。Z系とH系の違いは、簡単にいうと「性能と価格」です。
Z系チップセットは「高性能チップセット」。つまり、K(倍率アンロック)モデルのCPUと組み合わせて、とことんオーバークロックを追求したい、という人向けといえます。Z系チップセットを搭載したマザーボードの価格は、高めです。
一方、H系チップセットは「標準チップセット」。つまり、CPUをオーバークロックする予定もなく、標準的な性能でよい、という人向けといえます。H系チップセットを搭載したマザーボードの価格は、Z系のものより低めです。
ご自身のPCの使用目的および予算と比較して、Z系とH系のどちらかを選ぶと良いでしょう。
※予算があれば、Z系を選んでおけば確実です。ただし、性能をフルに引き出すことなく「宝の持ち腐れ」になる可能性もあります。
6)マザーボードの「価格」と「スペック」で絞り込む
「ソケット」「大きさ(フォームファクタ)」「メーカー」「チップセット」が決まれば、あとはマザーボードの「価格」と「スペック(仕様)」で絞り込むことになります。
だいたい、予算が決まっていると思うので、その範囲内で購入できるマザーボードをいくつかピックアップ。最終的に「スペック」を確認・比較して、購入を決めるとよいでしょう。
マザーボードの価格差の理由は「機能と拡張性」
マザーボードの価格帯は数千円~数万円と広く、格安品と高級品の価格差が大きくなっています。価格差の理由は「機能と拡張性」。機能・拡張性が高いほど価格も高く、低いほど安くなります。
上位モデルは独自の機能が豊富で、付属品も充実しています。また、耐久性の高い部品を使い「長寿命」をアピールする製品も。具体的には、ゲーマー向けのマザーボードなどが挙げられます。
一方、下位モデルになると、スロットや端子の数が少なくなり、機能・付属品も必要最低限のレベルとなります。
予算があれば、上位モデルのマザーボードを選んでおけば確実です。ただし、性能をフルに引き出すことなく「宝の持ち腐れ」になる可能性もあります(チップセットの項目でも説明したとおり、ですね)。
マザーボードの「スペック」を確認する
「価格」から、マザーボードを具体的にいくつか選んだあとは、実際にメーカーのWebページなどを見て、マザーボードの「スペック」を確認しましょう。
スペックについての、おもな確認項目は次の通りです。
- 1)拡張スロットの種類と数
- グラフィックカードを挿すPCI Express x16スロットやテレビチューナー、サウンドカードを挿すPCI Express x1スロットそして従来のPCIスロットなど。数が多いほど、機能を増やせます。
- 2)ストレージ・インターフェースの種類と数
- 光学ドライブ・ハードディスク・SSDなどの「ストレージ系デバイス」を接続するための規格とその数(ポート数・スロット数)のこと。Serial ATA 3.0ポート(6Gbps)ほか、「mSATA」「M.2」など。また、RAID対応なども。
- 3)VRM(電源回路)
- マザーボードの「信頼性」に関係する部分。電源ユニットから供給される電圧をCPUに適応した電圧に変換する装置。VRMの電流交換を行う回路(フェーズ)が多いほど負荷耐性・長期的信頼性が高い、ということになります。一般に、高価なマザーボードほど、VRMにもコストがかかった回路が使われています。
- 4)無線LAN機能
- 有線LANに加えて、無線LANを搭載するマザーボードも増えています。パソコンの使用場所・設置場所の関係で最初から無線LAN接続での利用を考えている場合は、チェックすることをおすすめします(無線LAN機能がない場合でも、USB接続による無線LAN子機やPCIバス用無線LANアダプタによる「後付け」は可能です)。
- 5)映像出力端子
- マザーボードの(I/Oパネルの)映像出力端子は、CPU内蔵GPUの映像を出力するための端子。ビデオカードではなくCPU内蔵GPUを使う場合は、使用するディスプレイに対応した端子を備えているかをチェック。デジタル出力のDisplayPort、HDMI、DVI、およびアナログ出力のDsub(D-Sub 15ピン)などがあります。ただし、すべての端子を備えているとは限らないので、必ず確認を(ハイエンド製品でもビデオカードの使用を想定して、HDMIだけという場合があるので)。ちなみにビデオカードを使うなら、(I/Oパネルの)映像出力端子は不要。
- 6)サウンド機能
- ゲーム向けのいわゆる「ゲーミングマザーボード」では、サウンド機能も充実しています。別途「サウンドカード」を購入する場合は、無視してもよいでしょう。
- 7)マルチGPU機能
- 対応している「マルチGPU」の規格など(マルチGPUとは、同じGPUのグラフィックボードを2枚以上搭載することで3Dグラフィック機能を大幅に向上させる技術。NVIDIA の SLI や、AMD の CrossFireX など)。グラフィックボードを使わない、あるいは1枚だけの場合は、無視してもよいでしょう。
- 8)メモリースロットの数とメモリの種類
- メモリを挿すスロットは「4本」が基本。ただしMicro-ATXなど基盤のサイズ自体が小さい場合は、2本しかないものも。一方、使えるメモリの種類(DDR3やDDR4など)も要チェック。また、メモリーのオーバークロックをする場合は、スペックを確認して対応クロックをチェックしましょう。
- 9)その他、マザーボードメーカーが独自に提供しているユーティリティや機能など
- 例えば、オーバークロックの設定ツールやUEFI(BIOS)のアップデートツール、ファンの回転数を制御するツールなどがあります。
コラム:マザーボードの「販売代理店」について
マザーボードの販売、および初期不良や故障修理などに関する製品サポートは「販売代理店」が行っています。この販売代理店はいくつかあり、製品パッケージに貼られている「販売代理店シール」を確認することで、どの販売代理店が扱っているマザーボードなのか? を確認できます。
つまり自作パソコンショップによって、同じマザーボードでも製品パッケージに貼られている「販売代理店シール」が「A販売代理店」だったり「B販売代理店」だったり、違っていることもある、というわけです。
例えばASUSの場合、「株式会社アユート」「テックウインド株式会社」が販売代理店となっています。GIGABYTEの場合は、マザーボードおよびBRIX製品については「株式会社リンクスインターナショナル」「旭エレクトロニクス」が正規代理店に、ビデオカードなどについては「CFD販売株式会社」が正規代理店となっています。MSIの場合は、「株式会社アスク」「株式会社アユート」「株式会社マイルストーン」「株式会社リンクスインターナショナル」が正規代理店となっています。
注)2015/11/現在調べ。その後、契約状況により代理店が変更されている場合があります。あらかじめご了承下さい。
マザーボードを購入する際は、製品パッケージに貼られている「販売代理店シール」を確認して、製品保証期間やサポート内容などに違いがないか、比較してみるとよいでしょう。
なお、販売代理店シールがない製品は「並行輸入品の可能性がある」とか。ASUSの場合「並行輸入品は日本語でのサポートを行っておりませんので、ご購入時にはご注意ください」とのこと。販売代理店シールの有無も、念のため確認を。
まとめ:標準的なPCで良いのなら、2万円以内のマザーボードがオススメ
マザーボードの価格帯は数千円~数万円と広く、またモデル数も多いので、どれを選べばいいのか、大いに悩むことと思います。
ゲーミング(ゲーム専用)PCを目指すのであれば、ゲーム向けのマザーボードを選ぶべきでしょう。その代わり、予算はかなり高くなることと思います(ビデオカードなども含めて)。
一方、標準的なPCで良いのなら、H系チップセットのマザーボードがおすすめ、といえます。あとは、拡張スロットや、ストレージのインターフェース(接続規格。接続コネクタ・接続端子)の数・規格などをチェックするとよいでしょう。
ちなみに、チップセットが進化した結果、最近のマザーボードはオンボードの機能が豊富。このため、拡張ボード(カード)を使って機能を追加する必要性が減ってきています。
個人的には、マザーボードの機能・性能のと予算のバランスを考えると、自作パソコン初心者にはASUSの2万円以内のマザーボードがおすすめかな? と思います。
※なお、ATXのPCケースにマイクロATXのマザーボードを搭載する、というのも「あり」です。というのも、拡張スロットが少ないだけで、(他のパーツ構成が同じなら)PCの基本性能やオンボード機能はそれほど変わりがないからです。
では次に、メモリを選ぶことにしましょう。次のページは「PCメモリーの選び方」です。
参考ページ:マザーボード
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