ビデオカードの選び方

ビデオカードの選び方の流れは、以下の通りです:

  1. GPUを選ぶ(NVIDIAかAMDか?)
  2. 映像出力端子の種類と数をチェックする
  3. ビデオカードの「サイズ」をチェックする
  4. ビデオカードの接続規格(インターフェイス)を確認する
  5. GPUの冷却装置をチェックする
  6. ビデオカードに最適な電源ユニットの選び方
  7. 「NVIDIA SLI」および「AMD CrossFireX」について

以下、順を追って説明します。

ビデオカードがそもそも必要かどうかチェック

ビデオカードとは「グラフィック機能」を持ったPCパーツ。すなわち、パソコンの映像に関する処理を行い、ディスプレイ(モニター)の画面に出力(表示)する役割を持ったPCパーツです。

ビデオカードの呼び方は他にもあり、「ビデオボード」「グラフィックアダプタ」「グラフィックボード(グラボ)」「グラフィックスカード」あるいは「VGA(Visual Graphics Array)」とも呼ばれています。

以前のCPUには「グラフィック機能」がありませんでした。このため、マザーボードに搭載されているグラフィック機能を利用するか、あるいは別途ビデオカードを購入する必要がありました。

しかし最近のCPUは「GPU」を内蔵しています。GPUとはグラフィック機能を専門に扱うプロセッサ(ビデオチップ)のこと(Graphics Processing Unit:グラフィックス・プロセッシング・ユニットの略)。つまり、CPUにグラフィック機能が標準搭載されていることが一般的となっているわけです。

したがってGPU内蔵のCPUを用いる場合、基本的にビデオカードは不要といえます。ワープロや表計算など「事務系ソフト」の使用、あるいは「普通の動画程度」の表示がメインなら、CPU内蔵のGPUでも十分といわれています。

ただし、CPUの新製品(新シリーズ・世代)から再び、グラフィック機能が省略されることがあるかもしれません。念のため、購入を検討しているCPUにグラフィック機能が搭載されているかどうか確認することをおすすめします。

ビデオカードを購入が必要となるケースは?

ビデオカードを購入したほうがいい場合、あるいはビデオカードが必要となる場合には、次の2つが理由としてあげられます。

ビデオカードを購入が必要となるケースは?
  • 1)GPUを標準搭載していないCPUの場合(ハイエンドCPUで、そういうCPUがある場合も)。
  • 2)高性能なグラフィック機能が求められる場合。例えば、3DのCGを作成する場合や、PCゲーム(FPSやシミュレーションゲームなど)で高精細なグラフィックがウリのゲームを快適に楽しみたい場合など。

とくに高速な3Dゲームや動画編集などが中心なら、ビデオカードに予算をかけるとよいでしょう。

GPUの2大メーカー/「NVIDIA」と「AMD」

GPUは、ビデオカードの性能を決める重要な部品です。インテルCPUの内蔵GPUはインテル製ですが、ビデオカードに搭載されるGPUは「NVIDIA(エヌビディア)」と「AMD(エーエムディー。旧ATI)」のいずれかに限られます。すなわち、この二つが「GPUの2大メーカー」となります。

NVIDIAのGPUには「GeForce(ジーフォース)」シリーズAMDのGPUには「Radeon(ラデオン)」シリーズという製品ブランド名が付けられて、GPUの「2大ブランド」ともなっています。

「GeForce」および「Radeon」の名称(型番)の見方はそれぞれ、以下の通りです。

例)「GeForce GTX 970」の場合

GeForce GTX(=クラス名) 9(=世代)70(=グレード。性能指標)
※GeForceのクラスの順は、G < GS < GTS < GT < GTX(右に行くほど高性能)

例)「Radeon R9250」の場合

Radeon R9(=世代) 250(=同じ世代間でのグレード)

ビデオカードの予算・価格帯の目安

おおよそのビデオカードの予算・価格帯の目安は、ローエンドで1万円~、ミドルクラスで3万円~、ハイエンドで8万円~、ぐらいと見ておけばよいと思います。

数千円のビデオカードなら買う意味はない、といわれています。最低1万円クラスから。最新の3Dゲームを楽しむなら、2~3万円のモデルを目安に。これ以上の上位モデルは性能も上がる一方、価格も非常に高くなると思ってください。

1)GPUを選ぶ(NVIDIAかAMDか?)

ここからは、ビデオカードの選び方を具体的に見ていくことにします。

自作PC初心者の方がビデオカードの選び方で悩む理由のひとつは「製品数の多さ」ではないでしょうか? 例えば「MSI GTX 970……」「ZOTAC Geforce GTX 960……」「玄人志向 GF-GTX750Ti……」「Palit Microsystems GeForce GTX 970……」「ASUS GTX750TI……」など……。ビデオカード本体のメーカーおよびその製品は本当に数が多く、選択に悩んでしまうパーツだと思います。

ただし、搭載しているGPUチップは先に述べたとおり、「NVIDIA」と「AMD(旧ATI)」の2つにに限られます。

つまり、ビデオカードの名称は「ビデオカード本体のメーカー名&GPUメーカー名」の組み合わせに過ぎません。例えば「MSI GTX 970……」なら、NVIDIAのGPU「GTX 970」搭載したMSIのビデオカード、「玄人志向 RH5450……」なら、AMDのGPU「RADEON HD 5450」を搭載した玄人志向のビデオカード……というわけです。

したがって、ビデオカード選びのコツは、まずGPUを「GeForceシリーズ」か「RADEONシリーズ」のどちらかに決めること。あとは製品のグレード(GPUの性能・メモリ容量・ビット数・オーバークロックの違いなど)を使用目的&予算との兼ね合いで比較し、バランスの良いビデオカードを選べばいいことになります。

一般的には、ビデオカードの性能が高いほど、価格も高くなります。

※ちなみに、両者の詳細については、フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』で詳しい情報が得られます。
NVIDIA - Wikipedia
AMD Radeon - Wikipedia

2)映像出力端子の種類と数をチェックする

PCモニター(ディスプレイ)と接続する「映像出力端子」のチェックも大切です。PCモニターの入力端子とビデオカードの出力端子で、同じものがあるかどうか? PCモニターとの対応状況をチェックしておきましょう。

ディスプレイケーブルをつなぐコネクタの種類(規格・形状)には、以下のようなものがあります。

映像出力端子の種類
  • DVI……PCとモニターを接続する端子。デジタル出力。
  • HDMI……ハイビジョンテレビにパソコンの画面を出力できる。
  • DisplayPort……DVIの後継規格。最大2560×2048ドットの解像度に対応。
  • D-Sub(VGA、D-sub 15pinとも)……アナログ出力。

現在、主流のコネクタは「DVI」と「HDMI」です。基本的に、使用するディスプレーに合わせます。ただし合わせなくても、DVI・HDMI・Displayportは相互変換が可能です(変換アダプタまたは変換ケーブルを利用)。

複数のモニターを使用する「多画面出力」を利用する場合には、同時出力可能な組み合わせをチェックしておきましょう。なお、ミドルクラス以上のビデオカードなら、基本的に全ての映像出力端子で同時出力が可能といわれています。

(参考)液晶ディスプレイの映像入力インタフェース(接続規格)については、以下のページに詳細な説明があります。
第2回 DisplayPortからD-Subまで――液晶ディスプレイの「映像入力インタフェース」を網羅する | EIZO株式会社

3)ビデオカードの「サイズ」をチェックする

ビデオカード選びではスペックや価格のほか、ビデオカードの「サイズ」にも注意が必要です。具体的には「マザーボードに組み込めるか?」「PCケースに収まるのか?」ということです。

「マザーボードに組み込めるか?」では、「占有スロット数」「スロット占有」という言葉に注目しましょう。これは、ビデオカードを取り付けた時に、隣接するスロット(マザーボードに拡張カードを装着する差し込み口)を占有する=ふさいでしまう、という意味。

つまり、スロット自体は空いていてもビデオカードで隠れるため、他のカードを挿せないわけです。空冷ファンを2つ搭載したモデルなど、高性能なビデオカードでは特に注意が必要です。

また「PCケースに収まるのか?」では、ビデオカードの長さに注意。奥行きや周辺スペースに余裕がないと、取り付けられない可能性もあるからです。

4)ビデオカードの接続規格(インターフェイス)を確認する

現在販売されている一般的なビデオカードの場合、拡張スロットのインターフェイス(接続規格)は「PCI Express(またはPCIe) 3.0 x16」が主流となっています。ただし、低価格モデルでは「PCI Express 2.1 x16」「PCI Express 2.0 x8」など、以前のバージョンのPCI Express規格のビデオカードもあるようです。

一方で、マザーボードの拡張スロットの仕様は「PCI Express 3.0/2.0 x16」が主流になっています。そしてx(数字)のビデオカードは上位のスロットに搭載可能。

ということで現在のところ、ビデオカードとマザーボードの互換性については、心配はないといえます(ただし、データ転送速度は変わるかも、ですが)。

とはいえ今後、新しい接続規格が登場するかもしれません。よって念のため、ビデオカードのインターフェイスとマザーボードの拡張スロットの対応については、購入前に確認するようにしましょう。

5)GPUの冷却装置をチェックする

ビデオカードには通常、GPUを冷却するファンが付属しています。ミドルクラス以上のビデオカードが備えるGPUの「ターボ機能」を生かすためには、しっかりとした冷却性能が必要。ビデオカードメーカー各社が独自の大型クーラーを搭載していることが多いようです。

製品によっては、この冷却ファンの「回転音」が気になる場合もあるようです。ネット掲示板などの口コミ情報などを見て、検討中のビデオカードの冷却ファンについて「爆音」などの評判が出ていないか、チェックするとよいでしょう。

もし冷却ファンの騒音があまりに気になるという場合あるいは、より強力な冷却機能を求めたい場合には、「VGAクーラー」(ビデオカード専用の冷却ファン)を別途購入して交換するという手もあるようです。

なお、ビデオカードの中にはヒートシンクを用いたいわゆるファンレス(ファンなし)のビデオカードもあります。冷却ファンがないため、冷却ファンの騒音問題の心配はないといえます。ただし性能の低いGPU=低価格モデルのビデオカードが多いようです。

(参考)価格.com - ファンレスのグラフィックボード・ビデオカード 人気売れ筋ランキング

6)ビデオカードに最適な電源ユニットの選び方

ところで、ビデオカードを追加する場合には、電源ユニット選びも大切です。というのも、ハイエンド(高性能)なビデオカードほど、消費電力が高くなるからです。このため別途、電力供給のために電源ケーブルの接続が必要となるビデオカードもあります。

逆にいうと、低スペックな電源ユニット(300W以下)を使用している場合、ハイエンドのビデオカードは基本的に組み込めないということにもなります。

追加したビデオカードが高性能なほど、負荷ピーク時の消費電力も跳ね上がります。つまり、出力の大きい電源ユニットが必要となるわけです。

最適な電源ユニットのワット数を簡単に調べる方法

では、ビデオカードの消費電力の調べ方……というより「最適な電源ユニットの選び方」とは? 基本的にはビデオカードの消費電力=GPUの消費電力となります。よって、必要とされる電源ユニットの電力(=ワット数)を簡単に確認するオススメの方法は、ずばり「GPUを手がかりに、自作PCショップのBTOパソコンのスペックを見てみる」ことです。

例えば、ドスパラのゲームパソコンのコーナー。左側にあるメニュー項目から「グラフィックから選ぶ」で「GeForce搭載」あるいは「Radeon搭載」を選びます。そのあとのページで「GTX970」や「GTX960」など具体的なGPU名をキーワードにして適当なPCモデルを選びます。そして「基本構成スペック」を見て、使用されている電源のワット数をチェックしてみる……というわけです。

(参考)ドスパラのゲームパソコンのコーナー

7)「NVIDIA SLI」および「AMD CrossFireX」について

一般的な用途では、ビデオカードは1枚でじゅうぶんです。しかし、複数のビデオカード(マルチGPU)を利用することで、3Dゲームでの描画性能をアップできる技術・方法があります。ただし、マルチGPUに対応したマザーボードも必要です。

以下、NVIDIAの「SLI」およびAMDの「CrossFireX」について説明します。

「NVIDIA SLI」

代表的なのが、NVIDIAの「SLI(Scalable Link Interface)」。複数のビデオカードを並列動作させて3D処理を分散することにより、描画性能を向上させる技術です。

SLIでは、同一のSLI対応ビデオカード(同じNVIDIAのGPU=GeForce搭載の、PCI Express ビデオカード)を2枚接続したデュアル構成が一般的です。通常、この2枚のカードは同じベンダー(メーカー)の同じモデルのビデオカードを使用します。

つまり、SLI導入に必要なのは、1)NVIDIA SLI対応マザーボード、2)同一のSLI対応ビデオカードが2枚、の計3点が基本、ということになります。

なお、同じGeForce GPUを搭載したビデオカードであれば、異なるメーカーの組み合わせでもSLIは動作します。ただし、動作クロックが異なる場合は低い方に合わせるため、性能が十分に発揮できないことも。また、メモリサイズの異なるビデオカードは混在できないとか。

ちなみにSLIの応用技術としては、2個のGPUを搭載したデュアルGPUビデオカード2枚を接続する「Quad SLI」や、ビデオカード3枚を接続する「3-way SLI」があります。いずれにしても、マザーボード側での対応も必要となります。

※詳細は「NVIDIA SLI技術 | NVIDIA」を参照のこと。

「AMD CrossFireX」

一方、AMDでは「CrossFireX(クロスファイアエックス)」というマルチGPU技術があります。これは「AMD版SLI」と考えるとわかりやすいでしょう。

CrossFireXでは、同一のCrossFireX対応ビデオカード(同じAMDのGPU=Radeon搭載の、PCI Express ビデオカード)を2枚接続したデュアル構成が一般的です(仕様上は最大4枚まで同時に接続が可能)。通常、この2枚のカードはSLIと同様に、同じベンダー(メーカー)の同じモデルのビデオカードを使用します。

つまりNVIDIA SLIと同様、AMD CrossFireX導入に必要なのは、1)CrossFire対応マザーボード、2)同一のCrossFireX対応ビデオカードが2枚、の計3点が基本、ということになります。

マルチGPU構成の注意点

マルチGPUを構成する際の注意点は、以下の2点です。

1)NVIDIA SLI・AMD CrossFireXのいずれにしても、ビデオカードおよびマザーボードの両方がそれぞれの技術に対応している必要があります。ビデオカードおよびマザーボードの仕様をチェックして、対応状況を確認してください。

2)電源ユニットの容量不足に注意しましょう。マルチGPUでは電力消費の大きいビデオカードを複数枚使用するため、出力の大きい電源ユニットでなければ「電力不足」に陥る恐れもあります。ビデオカードの消費電力および電源ユニットの出力を確認してください。

では、次のページは「PC用テレビチューナーの選び方」です。

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ドスパラのビデオカードのコーナーより(2016/11/01更新)
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